225人が本棚に入れています
本棚に追加
はい?何だって?
露骨に私がそんな顔をしていると、
「いや、だからね、僕死神なの。人間ではなくて。あっでもちゃんと大学通って試験も通ってるからちゃんとカウンセラーだよ、実務歴もそこそこだし。」
彼は立ち上がって必死で説明を始めたが…説明になってない。からかわれているのだろうか?
「死神ってあの死神ですよね。人の魂取りに来るやつ。」
「うーん、厳密には違うとこもあるけど大体あってる。」
…大丈夫なんだろうかこの人。
「明らかに信じてないよなぁ…」
彼は困ったという様子だけど、こっちは違う意味で困った。
新手の宗教かなにかだろうか。
「そりゃ証拠でもなきゃ普通信じませんよ。」
私はやれやれという様子で答えた。今までのやり取りは一体なんだったんだ…。
「君のおじいちゃん」
彼が急に真面目な顔で言い出した。
「母方だね、君が中学2年生の時に亡くなってるね。しかも3月3日のひな祭りだ。」
彼は淡々と続けた。
「君のおばあちゃん、母方だね。癌で胃とすい臓を全摘出してるけど、さらに転移してて亡くなってるね。君が大学4年生の時だ。」
「それから、君の父方のおじさんは末期癌で今まさに生死をさまよっているね。」
…どうして。なんで知っているのか。
おじさんの事なんて今朝父に連絡があって、父が慌てて出掛けて行ったのに…。
「傍にいると、傍にいる人間に血の繋がりのある死者やこっちの世界に近い人間の事がわかるんだよ。わからない人もいるけど。あ、これオフレコだからね?」
彼は私の顔を覗き込む様にに言った。
私は驚いている間ずっと下を向いていたらしい、信じられないという表情で、いつもより目を見開いた状態で。
「…信じた?」
彼は少し寂しそうな声で言った。
気味悪がられるか、罵られる事でもあったのだろうか。
「もし君が僕を信じてくれるなら、またここに来て。信じられなかったら来なくてもいい。来てくれたらカウンセリングはきちんとするし…本当に僕を信じてくれるなら、君が望む世界へ導いてあげる。」
そう言ったあと、彼は私に帰り支度をするように言い、玄関まで送ってくれた。
「あ、カウンセラーとして凛さんに一つ言っておかないと。」
無言のままの私に、彼はこう言った。
「凛さん、君は自分の身になにが起こっているのか知っていかなきゃならないよ。」
最初のコメントを投稿しよう!