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第2回心の処方箋 -問い合わせ-
「死神かぁ…。」
その日の夜中、引き籠もった部屋の中でずっと考えていた。
私の中での死神のイメージはこうだった。人とは少し違うかもしれない。
私が通っていた中学校には、体の弱い双子の先輩いたそうだ。
日常生活は送れるからと市立の中学に入ったのだが、一人は体育の授業で友人を応援していた時に体調が急変し死亡、一人はプールの授業でいつまでも浮き上がってこずプール内で死亡が確認された。
後日、その両親が「楽しかったであろう中学校生活の思い出に」と、一枚の絵画を学校に寄贈した。
ところがこの絵、しばらくは校長室に飾られていたらしいが、あまりの不気味さに撤去され、私達の代の時には文書庫で保管されていた。
ある日、教師の手伝いで文書庫に入る機会があった。噂の絵画が見られるかもと私達は好奇心に任せて、こっそり絵を探した。見つけた時には大騒ぎしたものの、絵を見た全ての生徒が恐怖した。
私は実はその絵画の全てを見たわけではない。
背景は黒一色、一人の女の子が割れた林檎を持っている絵だっだが、あまりの不気味さに、女の子の表情まではとても見られなかった。
話によるとうっすら笑っているらしい。
何故2人いた娘の絵ではなく、暗闇に割れた林檎を持って佇む少女の絵なのか…
何故割れた林檎を持っていなければならなかったのか…
そう考えた時、私には「たった一つしかない林檎(命)を真っ二つに切ってやるぞ、そしてその行く先は暗闇だ」と言っている復讐の絵に思えて仕方が無かった。
皆は単純に「林檎の絵」と呼んでいたが、私は「死神の絵」と勝手に名付けていた。
絵画の少女は死神に魅入られてしまって、あんな暗闇にいるのだと。
吉良さんが本物だとしたら、私は魅入られてしまったのだろうか。会いに行ったら、林檎を割られて真っ暗な所に連れて行かれてしまうのだろうか。
-でも…それもいいかも。
少なくとも、信号待ちしてる時にふと車の群れに飛び込みたくなる私だ。事故か不可解事件となるか、そんな事はどうでも良い。問題は私がいなくなったあと誰がどういう反応をするかだ。
私は医師から読む様にと言われ貸与された「なりたい自分になる方法」という本をゴミ箱に投げ捨てた。
ここに答えなど書いてあるはずがない。
私の望みは「できるだけ早く安楽死」なのだから。
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