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微かな胸の痛みと、いつもより強い心臓の鼓動を、じんわり感じ続けた。
その翌日はお祝いの言葉が降り注ぎ――お医者さんからは、これからについてを話された。
安定するまでは、心臓に負担をかけないこと。安定しても、無理はしないこと。定期点検はサボらずに。
つまりは今まで通り、ぼおっと過ごせばいいようだ。私は何故か安心した。
中学では体育を犠牲にする代わりに、勉強に力を入れた。姉は私の分まで陸上部で好成績を収めていたから、姉妹で丁度いいバランスだ。
たくさんの本を読んで、ついでに目を悪くして……私は病弱という個性に磨きをかけていった。
自分についても多くを学んだ。ようやく、お医者さんの言っていたことが理解できてくる。やっぱり実感は薄かったけれど。術後の縫い目をなぞると、そこにあるんだと気付かされた。
私の体には、ペースメーカーという機械が植え込まれている。リード線の先端が田植えのように心臓に埋まり、本体はお腹の中。電気の刺激で、なまけることなく脈を打たせているらしい。
電気を使うからには電池が必要で、私の場合は高校卒業ぐらいのタイミングに、本体の交換が迫られていた。
調べたのはそれだけじゃない。お医者さんが教えてくれる以上のことを、私は知った。
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