第二話 恵みの雨

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「で、稲垣先生はいつごろ戻ってくるとか言ってた? 昼休み終わる前には戻るかな。つか、いつ来てもいねぇなあの人。ほんと仕事してんのか」 「……先輩も、どこか具合悪いんですか?」 「いや、今日はちょっと業者の事を聞こうと思って来てみたんだ」 「業者?」 「あぁ、部活で使うコールドスプレーとかバンドエイドとかキネシオテープとか、そういう医療品関係のね。今まではマネージャー達が近くの薬局でその都度買って補充してたんだけど、そういう備品は運動部がそれぞれ独自に調達してるから、それを取りまとめて一括で注文すれば安く仕入れられるんじゃないかって思ってさ。で、まずは稲垣先生にそこら辺の医療品関係の業者のこと聞いてみようってことになった訳」 「そうなんですか、大変そうですね……」  先輩がテニス部の人だという事は知っている。でも練習や試合に出たりするだけで、そういう雑用は先生や学校の人がやってくれるものだと漠然と思っていた。舞台裏の事にまで気を配り、具体的に何か行動を起こそうとする先輩がなんだかとても大人に見えた。 「限られた部費の中でやりくりしようと必死なだけさ」  恩を売っておいたから来期は多少融通が利きそうだけどな、と呟いてから先輩は僕ににっこりと微笑みかけた。 「そういえば、尚里はどこか部活入ったのか?」     
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