第二話 恵みの雨

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 雨足が一段と強さを増した。  そう思ってしまうのは、先ほどまで聞こえていた様々な生活音がなくなり、雨音ばかりがやけに大きく耳に響きだしたせいかもしれない。この白い布地のパーテーションの向こうで、書類をめくったり、スリッパでぱたぱたと歩き回ったりしていた養護教諭の稲垣先生は、昼食に行くと言って出て行ってしまった。  人の気配が感じられるということは、それだけで安心できるのだと改めて気づかされる。ぱらぱらと窓を打つ雨粒の単調な音は、僕の心細さを増幅させた。  もう見慣れたはずのこのベッドから見上げる外の景色も、ガラスを涙のように伝う水滴が邪魔するせいでぼんやりと滲んで、少しだけ悲しげに見える。ぽつりぽつりと窓に当たっては流れ、落ちてゆく水滴を見ているうちに余計に気分が滅入ってきた。 「ふぅ……」  ここで、こうして溜め息を吐くのも一体何度目になるだろう。  入学する前までは、明るく健康的な学園生活を送るのだと意気込んでいたのに、結局は病弱キャラが定着してしまった。入学式の日に、いきなりぶっ倒れて注目を集めてしまえばそれも当然の事かもしれないけれど。     
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