第二話 恵みの雨

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 ふるふると首を横に振る。文化系の部を中心にいろいろと見学させてもらったけれど、結局はどこにも入部届けを出していない。 「先輩に『弱点は誰にだってあるから気にするな』って言われて、すごく気が楽になったんです。誰かに迷惑をかけた分、誰かの弱点を補うために何か僕ができることをすればいいんだって思えて。だから、迷惑だろうからって尻込みせず、僕もどこか部活に入って頑張ろうって思ったんですけど、いざとなったらなかなか勇気が出なくて。ダメですよね、こんなじゃ」  ちらりと伺う様に上目遣いに先輩の顔を見上げると、先輩は僕の顔を思い詰めるようにじっと見て、それからふいに目をそらした。 「あー、ダメだ……」 「……やっぱりダメなんだ」  先輩に否定されたことがショックで、鼻の奥がツンと痛くなる。 「あ、違う違う。お前に言ったんじゃない。俺がもうダメだ、観念しようと思ったってこと!」 「先輩が、ダメ? ……観念?」  意味がわからず首を傾げる僕に、先輩は改まったように姿勢を正した。 「なぁ、尚里。『初めより思ひはまりて濡るる時、心に苦しみなし』って言葉知ってるか?」  初めて聞く言葉だったので、素直に「知らないです」と答えた。     
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