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予想以上のすっぱさに舌の両端がきゅんと痛む。
「なんか、ちょっと元気出てきたかも」
きっと、先輩は落ち込んでいる僕を励まそうと、弱点は虫だ、なんて突拍子もないことを言い出したのだろう。そのふんわりと柔らかな心遣いが胸に沁みる。
春の陽だまりのように心を和ませてくれる言葉と、春の陽だまりのようにあたたかな掌の感触。
それと――。
抱きしめられ、お腹に感じた微かな息遣い。
僕の鼓動は当分収まりそうもない。
第一話 陽だまりとレモン
End.
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