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「葛岡、四月から椎名の補佐についてもらうことになった」  新年度の四月を目前にしたその日、広務は部長からそう通告された。一瞬意味がわからず、呆けたように広務の口はぽかんと開けっぱなしになった。 「えっ……、えっ!?補佐って、俺、何かミスしましたっけ?」  広務は新卒で大手文具メーカーの営業職を新卒入社後、七年続けている。現在、広務が所属する営業一課は主に企業向けの企画営業を行っている。  そして部長が広務を補佐につけたいという椎名は営業二課所属の、しかも広務より年下の後輩社員だ。二課は販売エリア開発を主に担当しており、他に都内近郊の小売店ルートまわりをする営業などがある。  広務が勤めるロクカク株式会社では、新入社員は本社または関西支社で一年の研修後、地方に十数ヵ所ある販売会社で営業を一年勤める。その後開発やデザインなどそれぞれの部署に配属されるのだが、椎名は二課に配属されて二年になる。二課新人の仕事は小売店まわりが主だ。椎名も例にもれずそうだったはずだ。  それがなぜ自分が椎名の補佐につかなければいけないのか。ルート営業の補佐といえば書類制作等の雑務くらいだ。それなら専門の派遣社員がいる。  新手のリストラかなにかだろうか。自分はそこまでされるほどのミスをしたのだろうか。  広務は一課のトップとまではいかないが、それなりに高い営業成績を上げている。仕事が生きがいとは言わないが、そこそこのやりがいを感じる程度には情熱を持って勤めていた。  
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