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 カクテルをスマートフォンで撮影し、さっそくSNSにアップする。リアルな友人達との繋がりがない方のアカウント、いわゆる『裏アカ』の方に、だ。  さっそく『いいね』の通知が届く。裏アカで繋がっているのは、広務と性的指向が同じ仲間達だ。  広務はゲイだ。  自分がゲイだと気がついたのは大学生の頃だった。気づくのが遅くなったのは女の子に対し『かわいいな』とか『綺麗だな』と、男子としてちゃんと感じる自分がいたからだ。もしかしたら心の奥で、自分がまさかゲイだなんて、と認めたくない気持ちがあったからかもしれない。  しかしある日突然、目が覚めるみたいに自分の性的指向に気がついたのだ。 「ヒロくん、お待たせ」  スマートフォンを見ていると、今夜の相手が隣に座った。今夜で二回目の夜を過ごす彼は年下の大学院生だ。 「ううん。待ってないよ」 「ほんと?よかった」  彼がジントニックを注文するのと同時に、広務も二杯目をオーダーする。 「深山くん、いつもの」 「はい」  ロンググラスにピンク色のカクテル。可愛い見た目だが、実はウォッカが入った強めの酒だ。ちょこんとサクランボを添えるのが広務のお気に入りだ。 「ヒロくん、前もそれ飲んでたよね。何ていうカクテル?」  サクランボを唇の合間に挟み、広務は妖艶に微笑んで答える。 「セックス・オン・ザ・ビーチ」
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