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特別に、ありふれて。
「それじゃ、今日はこれで解散」
担任の菊池先生がそう言うと、教室内はあっという間にざわざわとした声で満たされた。
「部活だりぃなー」とか「今日これからどこ行く?」とか、みんなそれぞれの放課後を過ごす。教室内を満たすざわめきの主達は、そんな当たり前の高校二年生達だ。
俺も、そんな当たり前で普通の高校二年生。
「やましたー!」
俺を呼ぶ声がする。誰が俺のことを呼んでいるかはすぐにわかった。
「どしたの、てっちゃん」
紺色の学生カバンの中に適当に文房具を詰め込んで、ニコっと笑顔を作って振り返った。
「今日、部活?」
てっちゃんは上目遣いをして俺に言った。いや、正確には上目遣いにならざるを得なかったと言うべきかも。
「いや、ちがうよ、てかとりあえずここ座る?」
そう言って俺は自分の膝の上をポンポンと叩いた。
てっちゃんはなんの躊躇も無く俺の膝の上に座り、俺はてっちゃんを後ろから抱いて、頭の上に顎を置いた。
仲の良い男子高校生同士の、よくある光景のひとつだ……と思う。
「えーっと、そんじゃバイトは?」
「今日は休みだよ」
てっちゃんのさらさらとした髪の毛を撫でる。
ふわり、と甘いシャンプーの香りがした。
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