リバーシブル・カット

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 このゲーム、キャラは六人で、全員とタチネコどちらのルートも選べる。だがアフレコは一人ずつ、動画や静止画の撮影は二人ずつだった。二人で撮っても大変なのに、六人入り乱れて撮ったら感情移入が難しすぎる。  今日と明日で遠田くんとの撮影は終わりだった。明後日からは脳天気な精神科医と引きこもり高校生の撮影が始まる。  遠田くんは俺との静止画の撮影の日から、一人暮らしの俺のアパートに役作りの相談に来ていた。俺にとっても助かった。男同士なんて未知の世界、一人じゃ役作りできない。今日も二人で相談会だ。 「明日で終わりですね」 「そうだな」  ため息混じりにソファに座る遠田くんにビールを差し出す。ここ数日のお決まりだ。 「ついに、明日っスね」 「ハハハ」  明日はエンディングの動画、キスシーン撮影があるのだ。 「練習、します?」 「いやっ、いいだろ!? 明日も一発で決めてやる」  男とキスシーンなんて、一度で十分だ。 「けどダメ出しされたら、人前でまた撮り直しですよ?」  あぁあ、そうだ。 「ハハハ、遠田くん、頭回るネ」  缶ビールを開けて、乾いた口の中を潤した。何度も撮り直しなんかしたら耐えがたい羞恥だ。     
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