0章 終わりと始まりの境目

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0章 終わりと始まりの境目

むかしむかし、森の奥。大きな古木の下の小さな家に一人の女と子供が住んでおりました。質素ではありましたが、永い時を生きる者にとっては平穏こそが一番の贅沢でございますので、二人にとって十分な暮らしであったと言えましょう。 子供が寝息を立て始めたころ。女はふと、昔のことを思い出し物思いにふけっているようです。その横顔は美しく、人ならざる者のそれですが、どんな人間よりも慈悲深く優しげな顔つきをしております。 おやおや、彼女もどうやら深い眠りについてしまったようです。では、彼女の様子を見るのもこのぐらいにしておきましょうか。代わりと言ってはなんですが、今からわたくしが一つ、昔話をしようと思うのですが....。お付き合いいただけますか?ええ、なんせわたくしには有り余るほどの時間がありまして暇をしているのです。 ...聞いていただけるのですか?なんとお優しい! では、お話しさせていただきましょう。大昔、仲間たちのために永遠の憎しみを抱え一人戦おうとした少女と、愚かな想いを抱え禁忌を犯しながらも少女の心の支えとなった少年の因果の物語でございます。
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