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12月23日。タイムリミットまであと1日。
あれだけ複雑に絡んでいた赤い糸も、あともう少しで元の形に戻ろうとしていた。残すは丸い玉状になって絡まってしまった部分のみ。これさえ解けば、2人の赤い糸は問題なく結ばれるはずだ。
「……あ、また来てる」
結神帳に書き込まれた願いを読んで、生駒はぽつりと呟いた。
20××年 12月23日 15:48
年齢:17歳
性別:男
職業:高校生
金額:5円
願い:明日綾乃に告白します。今まで俺、自分の気持ちから逃げてばっかりで、他の女の子と付き合ったり希のことなんか好きじゃないって言い張ったりしてきたけど、でも。もう逃げるのはやめようって。自分の気持ちに素直になろうって決めました。だからどうか。どうか俺に勇気を下さいお願いします。
目を瞑って真剣に願い事をする島崎和也が写っている結神帳をそっと閉じる。そうだ。彼のためにもこの絡まった糸を解かなければならない。あともう少し、あともう少しで2人の糸を元に戻せるから。だから、もう少しだけ待っててくれ。
*
「ほ、ほどけた……!」
ぐちゃぐちゃだった糸が元の姿を取り戻したのは、24日の夕方だった。指先の感覚がなくなって、いつの間にか切っていたらしい細かい切り傷が、手を動かすたびにピリリと痛んだ。
「結神様結神様! 解けました!!」
「アンタ作業おっそいのよ!! 糸解くのに何日かかってんのよ待ちくたびれたわ!!」
「そんなこと言うなら手伝ってくれたっていいじゃないですか!」
「アンタが勝手にやりだしたんだからそれはアンタの責任よ!! 最後までやり遂げるのが筋ってもんでしょ!!」
なんだかんだ言って毎日心配そうに生駒の様子を気にしていた結神だが、相変わらずの憎まれ口で返答する。結神は生駒の手にあった2人の赤い糸を指をクイっと動かして自分の方に呼び寄せると、まじまじと眺めた。
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