4本目:さよなら三角、また来て四角

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「どれどれ。……あら、随分ボロボロにしたのねアンタ。実は不器用だったワケ? ま、切れてるところはないみたいだし、部下にしては上出来なんじゃない?」  ちなみに、これは結神の精一杯の褒め言葉である。 「まぁ見てなさい。こんな糸あたしがパパッと結んでやるから」  他人の糸を結ぶのが大嫌いな結神にしては珍しく、文句も言わずサッと両手で印を結ぶ。 「オン・マカラギャ・バゾロシュニシャ・バザラサトバ・ジャク・ウン・バンコク」  凛とした声が拝殿の空気を震わせる。その瞬間、迷いに迷って複雑に絡まってしまった赤い糸が、ようやくスルスルと気持ち良さげに結ばれた。綺麗な蝶々の形をした結び目が、不思議な輝きを放っている。  こういう時、ああ、この方は本物の縁結びの神様なんだなぁと実感させられる。こんな風にいつも真面目にやっていればいいのにと何度思ったことか……。 「ほーら見なさい!! あんなにボロボロでふにゃふにゃだった赤い糸がこんなに綺麗で美しい運命の赤い糸に早変わり!! さすがあたし!! 美人で天才!! 容姿端麗、純情可憐、才色兼備とはまさにあたしの為に作られた言葉ね!!」 「そうだ! 島崎くんと高橋さんの様子は……!?」 「ちょっと、完全スルーなの? ここは素直に同意するところでしょ?」 「ビジンでテンサイ、サイショクケンビな結神様ってスゴイナーサスガダナー」 「棒読み腹立つ!! ったく。こんなことなら協力するんじゃなかったわ!!」  いつも通り不機嫌そうな結神は、それでも勢いよく三面鏡の扉を開く。2人は現し世の鏡を覗き込んだ。
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