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〝だって俺、昔からお前一筋だし〟
〝つーか今もずっとだし〟
あの時の言葉が頭から離れない。廊下で女の子と楽しそうに話す幼馴染をおもいっきり睨み付ける。見事にデレデレしやがって。アイツ、どういうつもりであんなこと言ったのよ。あたしばっかり気にしちゃってバカみたい。
溜息をついて、ポケットに入れていた手紙を取り出した。〝好きです。もし良かったら付き合って下さい〟今朝、あたしの下駄箱に入っていたこの手紙は所謂ラブレターというやつだ。裏側に書かれた差出人の名前をみてもいまいちピンとこない。あーあ。知らない人には割と好かれるんだけどなぁ。あたしの好きな人はあたしを好きになってはくれないんだ。昔から。
「……し。……はし! 高橋!」
「えっ?」
自分の名前を呼ばれているのに気付いてはっとする。顔を上げると、なんと水沢くんが机の前に立っていた。あの時以来なんとなく話すのは気まずいけれど、水沢くんはあたしの一方的な失恋にも真っ黒な策略にも気付いていないみたいだから、その点はちょっと助かっている。
「どうしたの?」
「委員会のプリント。先生が渡しとけってさ」
「あ、わざわざありがとう」
水沢くんは先生から預かったプリントを渡してくれた。
「もしかしてそれ、ラブレター?」
「え? あ、これは……!」
慌てて手紙を隠しても、水沢くんにはお見通しらしい。水沢くんは目と口を細めてニンマリと笑った。
「さっすが美少女高橋綾乃! モテるね!」
「……あたし別に美少女じゃないし。それに水沢くんほどじゃないよ。ファンクラブまであるくせに」
「ファンクラブなんてないってそんなの。それに、俺は彼女出来てから告白とかは減ったから」
サラリと惚気話を入れてくる所がムカつく。まぁ、別にいいんだけどね。
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