4本目:さよなら三角、また来て四角

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「なるほどなー。これじゃ島崎も気が気じゃないだろーなー」 「え、なんで島崎?」 「幼馴染なんでしょ? ていうかアイツいっつも高橋のこと見てるし」  水沢くんはニコリと笑って言った。水沢くんって何故か島崎と仲良いんだよね。いっつも2人でいるの見てたし。 「俺が言うのもあれだけどさ。島崎、不器用でバカで初恋拗らせてるヘタレだけどいい奴だから。高橋、これからもずっと側にいてやってよ」 「え?」 「出来ればアイツの一番近くで。ね?」  水沢くんはそれだけ言い残すと、残りのプリントを配りに次のクラスへと向かった。  ……そんなこと言われたって。あたしはただの幼馴染でしかないのに。これ以上近付くことなんて出来ないのに、どうすればいいのよ。あたしの口からは深い溜息が吐き出された。 *  今日がバイトで良かった。休みの日に一日中家にいたら余計なことばっかり考えちゃいそうだもん。バイト先に向かうバスに揺られながら、ぼんやりと窓の外を眺める。  クリスマスまであと4日か。そういえばアイツ。イブの日バイト先に来るとか言ってたけど本気かなぁ。友達とか、それこそ女の子にいっぱい誘われてるくせに。それを断ってわざわざあたしの所に来るわけ? だいたいさぁ、……って! 結局アイツのこと考えちゃってるし!! あーもーなんなの! 調子狂う!!  信号が赤になって、バスはゆっくり停止した。街はみんなクリスマスカラーに染められ、店先もクリスマス用品でいっぱいだ。そんな街並みを眺めていた窓からぱっと見えた人影に、あたしは思わず言葉を失った。
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