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ミルクティー色の明るい髪、黒のダウンジャケット、スキニージーンズ。間違いない。歩道を歩いているのは幼馴染の島崎だ。そして隣にいるのは──ピンク色のワンピースを着た可愛い女の子。
よく見ればこないだ廊下で楽しそうに話してた子じゃん。
島崎と女の子はこちらに気付く様子もなく、何か話しながら歩みを進めていた。何を話しているのかはさすがに聞こえないが、島崎は真っ赤になって照れたり、楽しそうに笑顔を見せていた。傍目から見ていて、それは間違いなくデートそのものだった。
……ああ、やっぱり。あの言葉はあたしをからかうための嘘だったんだね。頭がすっと冷えていくのを感じた。
そうだよ。島崎の気持ちはずっと前から知ってるし。別に期待してたわけでもないし。だから別に平気だよ。アンタなんか好きじゃないもの。それなのになんで……なんでこんなに胸が苦しいんだろう。
*
モヤモヤした気持ちのまま過ごしていると、あっという間に冬休みに入り、気付けばクリスマスイブ当日を迎えていた。
あたしはバイト先のファミレスで途切れない客に笑顔でオーダーを取り続ける。友達、カップル、家族連れ。店としては有難いことに満員御礼、予約表にも名前がぎっちり書いてある。さすがに今日は人の出入りが激しいな。
「いらっしゃいませー」
入店の音楽が鳴るたびに、こうして入り口を気にしてしまうのはアイツの事を気にしているからだ。アイツが来たとしても、それはただ働いてるあたしをからかいに来るだけでそれ以上でもなんでもないのに。……ていうかホントに来るの? もうすぐバイト終わるんだけど。
「あの、高橋さん!」
「え?」
自分の名前を呼ばれ、驚いて振り返る。
「あの、突然ごめん! 俺山口って言います。あの、同じ学校で、前にその……手紙、書いたんだけど……」
「……あ」
あたしは机に入っていた一通の手紙を思い出す。
「ご、ごめんなさい! あたし、あの……」
「こんなバイト先に押しかけるような真似してごめん。今日、ちょっと渡したいものがあって……このあと暇? もし時間あるならさ、一緒にツリー見に行かない?」
「いや……まだバイトあるし」
「おい!」
怒ったような声が聞こえて、腕をぐっと掴まれる。
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