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「あーホントこういうのうざい!! これだからクリスマスなんて大嫌いなのよ!! こんな文化滅びてしまえ!!」
「頭にサンタ帽被りながら言っても説得力皆無です。両手にチキン持ってホールケーキまで用意して、どんだけクリスマス満喫してるんですか? その無駄な準備の良さは他のことに使って下さいよ」
「サンタさーん!! あたしにお金とイケメンの彼氏連れてきて!! お願い!!」
「またそんなこと言って……って。まさか枕元にあるあの異様にデカイ靴下はあれですか? サンタさんからのプレゼント用ですか? 嘘でしょ? どんだけ欲張りなんですかあれ人間1人ぐらいは余裕で入れますよ?」
「イケメンの彼氏お願いしてるんだからそれぐらいの大きさは当たり前でしょ!?」
「思考がサイコパスなんですけど。頭大丈夫ですか? だってもし朝起きて本当に中に誰か入ってたらどうする気なんですか?」
「そんなの決まってるじゃない! 付き合うわよイケメンならば!!」
「……はぁ。俺は貴方の狂気にも似た本気が怖くてたまりません」
空から舞い散る粉雪は、境内の景色をゆっくりと白く染めあげていく。
「あ、そうだ結神様」
「なによ」
「メリークリスマス」
「……はぁ!? 今このタイミングで言う!?」
「いやどのタイミングで言ってもいいじゃないですか。それとついでにこれ。どうぞ」
生駒は小さなラッピング袋を結神に渡す。
「……なによこれ」
「俺からの細やかなクリスマスプレゼントです。今回の件、俺にやらせてくれた感謝の気持ちも込めて」
「……別にアンタのためにやらせたわけでも、クソガキ共のためにやらせたわけでもないし」
「ハンカチの一枚くらい持ってないと女としてヤバイと思ったので。頑張って使う場所見つけて使って下さいね」
「一言余計なのよアンタは!!」
生駒は鼻歌混じりに机の上のホールケーキを切り分け始める。真ん中に乗せられたチョコレートのプレートと砂糖で作られたサンタクロースのお菓子をひょいと取ると、切り分けたケーキに盛り付けた。
「はいこれ。結神様、好きでしょう?」
結神は無言で皿を受け取るが、顔は嬉しさを隠しきれていなかった。
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