1本目:いちご飴は恋の味

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「もう嫌なの!! 他人の幸せの手伝いをすることが!! うんざりなの! 他人の幸せそうな笑顔を見ることが!! だってそんなのずるくない!? なんでみんなばっかり!? あたしだって幸せになりたいのに!!」 「僻みはやめて下さいよ。まったく。神様が人間に嫉妬してどうするんですか」 「うるさい!! 神様だって嫉妬くらいするのよ!」 「……やれやれ。これじゃ()()()()様じゃなくて()()()様ですね」 「ドヤ顔してるけどそれ全然うまくないから。あたしが大喜利の司会者だったら光の速さで座布団没収してるからねそれ」  女は不機嫌そうに顔を顰めて忌々しげに呟く。 「あーもうやってらんない。マジでやってらんないムリムリムリムリ」  自己中心的でワガママ、他人の幸せが大嫌いで、口を開けば嵐のように轟々と文句ばかりを吐きだす捻くれた性格のこの女。なんとも残念なことに、彼女こそが数百年続く由緒正しき縁結びの神社、結野神社の神様である第22代目・結神(ゆいがみ)様なのである。  よりにもよってこんなのが縁結びの神様だなんて……世も末だ。  ちなみに、あくせくと働く真面目そうな男は彼女の元に仕える可哀想な部下だ。名を生駒(いこま)という。ちなみに、初対面で自己紹介した時に結神から言われた「アンタはあたしの雑用係なんだから、これからあたしに精一杯尽くしなさいよ!!」という言葉は彼のトラウマである。 「でもさぁ正直。マジぶっちゃけさ、縁結びの神様がフリーなのってどう思う? ぶっちゃけヤバくない? 立場的にもヤバくない? 彼氏も旦那も好きな人もいないんだよヤバくない?」 「本当にその通りですね。あ、恥ずかしいんで他では言わないで下さいよ? 神社の評判がガタ落ちですから」 「はぁ!? 生駒のくせに生意気な!! そんなこと言ってるとクビにするわよクソ野郎!!」 「はいはい。クビでもクソでもなんでもいいですから、とにかく真面目に仕事して下さいね。ただでさえ最近この神社は信用ならないとか噂されてるのに。これ以上評判落としたらここ潰れちゃいますよ。本当に危ないんですからね?」 「え、嘘。世間ではそんな噂流れちゃってんの? マジで?」  結神は少し真面目な顔をすると、考え込むように言った。
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