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テレビの中の彼は淡々とした様子で全国民に対して、続けて国家非常事態宣言が発令された事、これに伴い外出禁止令が発布されたことを知らせていた。
ヤバい、ヤバい。
慌てたわたしはテレビをつけたまま、どうしていいか解らず立ち尽くしてしまった。
ママぁ~。おばちゃんが変だよ。
不安げな娘を声を聴き、ハッとして庭を振り返る。
そこには娘の頭を撫でている姿勢のまま、腰から後頭部にかけて異様に身体が膨らみ始め小刻みに震えている奥様の姿があった。
あぶない!
咄嗟に庭を駆けたわたしは奥様から娘を引きはがし、リビングに転がり込み窓を閉めた。
外で爆発音がして窓を真っ赤に染めたのは、この直ぐあと。
助かった。
わたしがギュッと力いっぱい抱きしめた所為で、息が苦しかったらしい娘がべそをかく。
わたしはごめんねと謝り腕を放した。でも娘はなぜだか離れようとはしない。
どうしたの?
あれ、ネコちゃん?
娘が尋ねる方を見ると、毛の生えた肉色の風船玉が転がっていた。
陸上自衛隊の化学隊に所属する尉官の夫が、休む間もなく行っていた効き目も怪しい除染活動を続けること三週間、やっととれた休暇を利用して妻と娘に連絡をとろうとしたところ、妻や娘はおろか、自分の親とも連絡がつかないことを知ったのは、この四日後のことである。
地球・RESET。 伝染肉球
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