浅草の仲見世で。

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 既に大方の生徒は乗り込んでいて、あたしの後に乗り込んで来たのは外で生徒の帰り具合を確認していた先生とバスガイドと、クラスカーストでも上位に位置する見た目はイケてる男女のグループたちだけだった。  アイツらバスでもとりを持ってくのかよ。  通路を挟んだ座席に座る男子が、濡れたタオルでしきりに腕を拭いながら忌々し気に呟いたのが聞こえた。  どうやら彼はあの現場にいたらしい。白いタオルが所々ピンク色になっているのが目に留まる。  え~。大変な騒ぎになったが皆無事でよかった。ケガをした人もいないようで安心しました。  大学を出て数年しかたっていない今時珍しい黒縁眼鏡の先生が、マイクを片手に無事を喜んでいる。  修学旅行。  ただ、憂鬱でしかなかった学校行事の三日目は、こうして都内のホテルに向かう道中を残すだけになった。  あしたは何事も無ければ、唯一楽しみにしていた千葉にあるのに東京なテーマパークで遊びお買い物な予定が待っている。  さっきの事件で持ち切りな車内の賑わいを無視して、夕闇が迫る東京の景色を首都高から眺め、一人微笑んだ。  彼女が体育館で行われていた全校集会の最中に、頭と腹を一気に膨らませ破裂させるという謎の奇病で命を失うのは、これから一週間後の事である。  地球・RESET。 奇病発生。
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