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とは思ってはみたけれど、やっぱり小刻みに震える手は、中々いうことを聞いてはくれず、テレビやネットで見る落ち着いた動画撮影とは程遠い代物しか撮影できない。
なんだよ。なんだよ。
ブレまくるスマホを両手で抑え込み、どうにかモノに成る動画が取れた頃には、人々は既に現場を遠巻きに不安げな様子で眺め、産業フェスティバルに参加していたらしい警察と消防、それに自衛隊が、フェスティバルの為に持ち込んでいた車両を使って、付近一帯を、まるで目隠しする様に封鎖した後だったのだから、情けない。
僕、素人だし、しょうがないよね。
誰に話すでもないのに、自分を納得させる為だけに呟いた僕は、依然遠巻きにしながらも、僕と同じようにスマホやデジタルカメラで撮影を続ける野次馬を横目で見ながら、横断歩道を下って駅とは反対方向に歩みを進める。
あっと、Twitterにアップし忘れてたよ。
慌ててスマホを取りだして、さっき撮った画像と動画をアップする作業をしながら、近くの書店に入り、お気に入りのラノベの新刊を手に入れた。
今日はこのために折角の日曜日を無駄にしてまで、外に出たんだった。
あれから、たぶん一時間くらいはたったかな。
家に着いた僕は玄関を開け、靴を脱ぎ、ゆっくり階段を登って自分の部屋に向かう。
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