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イベント中の駅前で。
いきなり大きな風船が割れた様なイヤな音がして、僕は歩道橋の上で立ち止まる。
見ると、東側の駅前で道を閉鎖してやっている産業フェスティバルの会場で、赤色の煙が上がっている。
続けて破裂音が聞こえ、もわっとした赤い煙が立ち上っていく。
火とか見えないし、何かの催しかな?
だが次に響いてきたのは人々の歓声ではなく、耳をつんざくばかりの悲鳴と、大挙して逃げ出した人々の姿であった。
なにがあったのだろう?
僕は遊歩道の手すりに上半身を乗せ、辺り一帯の様子を僕は観察する。
幸い、風向きは東に向いていて、あの煙がこちらに流れてくることはない。
まさか、毒ガス?テロ?
僕は震える手でスマホのカメラを起動させ、ピントもろくに合わさずに、一心不乱に撮影を始める。
なんだこれ、ちゃんと写ってないじゃないですか。
完全に焦点のはずれた写メを見て、自分の動揺ぶりを棚に上げスマホに八つ当たりをする。
そっか。動画だよ。
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