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「ご主人様は相変わらず、誰かを助けるために自らを犠牲にするのですね」 「“相変わらず”? どういうこと?」 「私は一年前、同じようにご主人様に助けていただいた身です。道路に転がっていた、壊れて捨てられた機械」 「一年前……? 確かに去年も似たようなことはあったけど、でも、あれはっ」  麻智の言葉を遮るように、綾人が口を挟む。 「私は奇跡的に親切な人間によって修理を施されました。けれど、その奇跡の時間も先日終わりを迎えました。私はもうじき、動かなくなるでしょう。その前に、あなたにお礼がしたかったのです。今の私は、そのためだけにこの世に留まる念のようなもの」  ぼんやりと空を見上げながら紡ぐ綾人の表情も声色も何も変わっていないのに、麻智はどうしてかその言葉に切なくなる。 「動かなくなる? それって死ぬってこと?」 「私は機械です。死ぬという表現は適切ではありません。あなたは何度私が機械だと言っても、私を機械ではなく、まるで人間のように扱うのですね」  綾人は麻智をその目に捉えながらそう言う。その言葉にはどこか喜びの色が僅かに混ざっているように、麻智には聞こえた。  自分を心配そうに、不安そうに見つめる麻智の目を見つめながら、綾人は一年前のことを思い返す。
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