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「何、これ」  ある日、バイトから帰ってきた麻智(まち)の自宅の玄関前に、一つの段ボールが置かれていた。やたらと大きな段ボールで、小柄な少女一人では持つことも出来なさそうなサイズ。それ以前に、家の中に入るかどうかすら怪しいほど。 「うわっ、重! 何入ってるのこれっ」  試しに持ち上げてみようとしてみるも、やはり無理。麻智は思っていたよりも重いその箱の中身が気になり、玄関先だが開けてみることにした。 「えっ!?」  中には、目が見えないほど長い前髪の、身体を丸めた男性。まさか人が入っているとは当然思ってもいなかった麻智は青ざめる。 「ちょっ、嘘っ。まさか死体遺棄事件!? やだ、やめてよー!」  もう夜も遅い時間だということも忘れて、パニックのあまり麻智は一人きょろきょろと目を泳がせる。  すると突然箱に入ったままだったその男性の目が静かに開き、そのまま起き上がった。ぎょっとして思わずじっと見つめる麻智。怪しげな箱に入っていたのはまさかの死体で、死体だと思っていた人は生きていて。まるで何事もなかったかのように起き上がるのだから、驚くのも当然だろう。 「只今、初期状態です。先程の声紋をご主人様と認識致しました」 「は、え?」  全く感情の込もっていない声色で紡がれた言葉に、麻智はわけが分からなくなる。そんな麻智を見るや、男性は無表情に淡々と再度口を開く。
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