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翌朝。麻智は時計を見てぎょっとした。いつも起きる時間より五十分も過ぎている。焦る麻智の頭の中からは、すっかり昨日の男性のことなんて消えていた。
「おはようございます、ご主人様」
「……は?」
このときまでは。
(ちょっと、待って。え? 何でこの人がここに、というか家の中にいるの!? 昨日寝る前にちゃんと鍵かけたよねっ!?)
震える唇でどうにか言葉を紡ごうとする麻智。相変わらず、目の前の男性は表情一つ変えないまま。
「あんた、どうやって家に入ったの? 鍵かけたよね、私」
「私は機械です。施錠された扉を開けることなど簡単です」
(ピッキングしやがったな、こいつ……!)
「ご主人様、お時間はよろしいのですか? 簡単にではありますが朝食と、お弁当も作っておきました」
会ったばかりのよく分からない人が作ったご飯を食べるなんて、とも思ったが、この空腹のまま学校に行きたくないと、目の前の食事に誘惑され、渋々椅子に座る。
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