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「い、いただきます」 (う、嘘。美味しい……)  下手したら自分が作ったものより美味しいのではないかと思えるような味に衝撃を受けつつ、そのまま食べ進めて完食した。ちなみに特に変なものが入っていそうだとか、そういうことはなく、ただただ美味しいご飯だった。そして、始終男性にじっと横から見つめられながらの気まずい食事は終わった。 「ごちそうさま。美味しかったです。ありがとうございます。でも、ほんとに私が出るとき一緒に出てってください」 「ご主人様。こちら、お弁当です」 (聞いちゃいねえっ!) 「ありがとう、ございます」  お礼を言うのも味の感想を言うのも気まずいと思いながらそう言えば、返ってくるのは全く違う内容の返答とお弁当。流されるまま、ついついお弁当を受け取ってしまった麻智はお礼を言うと、昨日もやったように男性の身体の向きを変えて玄関まで連れていき、そのまま一緒に外に出る。 「私はもう行くので。勝手に家の中に入らないでくださいね! さっさと帰ってください!」  それだけ言ってつんと顔を逸らし、学校へ向かって走っていく。男性は家の前でその様子を無言で見つめていた。 (あー。やっとお昼。というか、まだお昼か)  昨日といい、朝といい、一気にいろんなことがありすぎて、まだお昼だというのにもうバイトから帰る時間のような疲労を感じていた麻智。だがそれもお弁当の中身を見て一瞬で吹き飛ぶ。 「えー。ははっ。何これ。キャラ弁って。ははっ、似合わなすぎっ」  お弁当の中身は黒猫のおにぎりにタコさんウインナーやら、あの男性からはとても結びつかないような可愛らしいものばかり。ちゃっかり別の容器にデザートのバナナまでもが一口サイズにカットされた状態で入っていた。味はもちろん。 「……美味しい」  麻智は気付かぬうちに、笑顔になっていた。
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