今日という日が特別であったなら

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僕と加藤がそんなたわいの無い話をしていると、後ろから声をかけられた。 「あら?珍しいわね。加藤君と櫻井君がここに来るなんて…」 話しかけて来たのは美術の朝倉先生だった。 教師歴15年のベテランで、この学校には12年前からずっと勤めていたそうだ。…ただ、僕らとは接点が僅かな授業だけしかなく、正直あまり話したこともなかったのでどんな先生かはよく分かっていなかった。 「いくら最後だからって、こんなところに来るほど思い入れがあったかしら?」 少し意地悪な自傷が混じりつつも、朝倉先生は気さくに話しかけてくれた。 「も、もちろんですとも!ここで朝倉先生に教わったことはこの胸にいつまでも刻まれてますから!」 「いや、ここに来て加藤が真っ先に思い出したことって僕と五目並べやったことだろ?」 「櫻井、それ言っちゃあかんやつや」 「いいのよ。どんな形であれ、あなた達に何かを残せたのなら、それより嬉しいことはないわ」 いままで朝倉先生と話したことがほとんどなかったので知らなかったが、意外に親しみやすい人だと僕は感じた。 三年も通ったのに、そんなことも知らなかったんだな…。 「どんな形でもって…五目並べした思い出でもですか?」 「それでも、この美術室は思い出として残っていくから…」     
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