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美術室を後にした僕達は学校をひとまわりして教室へと戻って来た。
気が付けば時間はかなり過ぎており、もうじき日が暮れようとしていた。
そういうわけで、すでに教室には生徒は残っておらず、いろんな意味でこの部屋は教室としての価値を無くしていた。
「俺、一度でいいからこういう誰もいない夕方の教室で女の子から告白されたいわ」
茜に染まる教室を見て加藤はなにを思ったのか、急にそんなことをボヤいた。
「『一度でいい』って言ってる割には、第二ボタンの予備は8個も持ってるんだな」
「一度に8人の女の子から告白される可能性だってあるからな」
「加藤が8人の女の子に取り囲まれてるところが想像出来ないわ。…いや、加藤をリンチするために囲んだとすれば考えられるか」
「8人の女の子からリンチとか…ご褒美やん」
「でもリンチなら第二ボタンの予備は要らないだろ」
「いや、リンチされてボタンが損傷した際に補填として使えるだろ」
「そんな悲しい第二ボタンの使い道があってたまるか」
僕らがそんなくだらない会話をしていると、後ろから担任の坂本先生が話しかけてきた。
「まだ残ってたのか。そろそろ帰りなさい」
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