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「僕がやり残したことか…。そうだね…僕が中学校の教師になった時から、あと2年しか教師が出来ないのは分かってたから、これでも後悔しないように精一杯頑張ったつもりさ。それでも…やり残したことはいっぱいあるんだ」
「いっぱいって…例えばなんですか?」
「一番は姫浦のことだな。…結局、不登校のまま卒業させちゃったからね」
サカもっちゃんの言葉からは肌で感じ取れるほどの後悔の念が読み取れた。
「他にもたくさんあるよ。例えば…櫻井、君を泣かせられなかったこととかかな」
「…え?僕をですか?」
「そう。ほんとは君だけじゃなくて生徒全員卒業式で泣かせたかったんだけどね…さすがに厳しいや。…まぁ、僕にはもうチャンスはないけど、櫻井達はまだ高校生活が残ってるし、そこで取り戻せばいいさ」
そう言ってサカもっちゃんは僕の背中を軽く押した。
「そういえば、サカもっちゃんはこれから仕事どうなるの?」
素に戻った加藤がサカもっちゃんにそんなことを訪ねた。
「そんなことを子供に心配されるほど落ちぶれちゃいないよ。教師になるにあたって、親には『教師になんてならないで』と泣きつかれたけど、それでも僕は教師をやりたかったんだ。それくらい、覚悟の上さ。…さぁ、もう時間も遅いし、そろそろ帰るんだ」
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