現実はまぁ、こんなもん

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現実はまぁ、こんなもん

普通だ。 やっぱり普通だ。 僕は小さなプレハブ小屋に並べられた楽器や音響機器、そして軽音部の先輩を目の前にそんなことを思っていた。 今僕は、加藤に誘われるがまま高校の軽音楽部に入部し、新入部員の自己紹介を兼ねた歓迎会の真っ只中にいる。 そこにはもちろん、魔王の佇まいで待ち構え、いきなり新入部員に即興でセッションをさせるような強烈な先輩の姿はなく、普通に歓迎ムードの和やかな自己紹介が繰り広げられていた。 「じゃあ次、自己紹介どうぞ」 人の良さそうな先輩がそう言って僕にマイクを差し出した。 「えっと…櫻井と申します。希望楽器はギターです。よろしく」 なんの面白みも印象にも残らないクソみたいに無難な自己紹介に我ながら嫌気がさした。 なにか言ってやろうとは思うものの特に面白いことも思い浮かばず、後ろ髪引かれながらも隣にいた加藤にマイクを手渡した。 「どうも、加藤です。希望楽器はギター…だったんですけど、間違えてベース買っちゃったのでベーシストになりまーす」 隣でそれなりに好印象な自己紹介を卒なくこなす加藤に僕は敗北感を感じた。 「いやー、嬉しいね。ベースは人数少なくて毎年困ってたんだよね」     
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