現実はまぁ、こんなもん

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そう呟く先輩に対して加藤は偉そうにこんなことを宣った。 「ベースの良さが分からない奴らは才能ないんですよー」 「そういうお前は間違えてベース買ってショックで3日も寝込んでたけどな」 そんな僕のツッコミにささやかな笑いが起き、先ほどのなんの面白みもない自己紹介の挽回が出来たと思い、心の中でガッツポーズをした。 そんなこんなで和やかに自己紹介も一通り過ぎて行った頃、先輩がこんなことを提案し出した。 「じゃあ、一年生で適当にバンドグループ作っちゃってくださーい」 突然の提案に僕は違和感を覚えた。 バンドのグループって、そんな簡単に決めていいものとは思えなかったからだ。 同じグループになればそれなりに関わってくる…もっと人柄とか音楽の趣味とか知ってからでも…。 僕と同じようなことを考えた人が何人かいたのか、困惑している人がちらほらと見受けられた。 そんな新入部員の心境を読み取ったのか、先輩がこんなことを呼びかけた。 「あんまり深く考えなくても、今組んだグループが絶対ってわけじゃないから、心配しないで」 そんな先輩の気遣いとこれくらい普通なことだという場の雰囲気に流されて、その数名もウロウロとバンドメンバーを探して歩き出した。 「どうするよ、加藤」     
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