現実はまぁ、こんなもん

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僕達は目を合わせてお互いにここまでの奮闘を称えあった。 だがしかし、ここはまだ9合目。山頂はもう目の前に迫っているが、ここから先には『話しかける』という最後にして最大の難所が待ち構えていた。 ここまで力を振り絞り、なんとか登って来た二人だが、山頂の前に立ちはだかる断崖絶壁のような最終関門に思わず絶句した。 麓から見るぶんには大したことない高さであったが、間近に迫るとその迫力は何千倍にも違って見えてくる。 覚悟を決めるためにも一度3日間ほど小休止を入れたいところなのだが、ここはもうエベレストの9合目。つまりは女子生徒の目の前、そんなところで覚悟を決めるために突っ立っていようものならば不審者を見るかのような山頂付近特有の凍てつくブリザードによって死へ誘われる可能性がある。 登るか降りるか…僕達はわずかな時間でその二択を迫られていた。 『ここは一度引いて体制を立て直すべきだ、加藤』 僕は隣にいた加藤にアイコンタクトでそう伝えた。 どれだけすごい偉業を達成したとしても、生きて帰ってこれなければ意味がない。だから、その偉業を目の前にあえて撤退という選択を決断するのもまた勇気なのだ。     
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