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小学校の取り壊しを解決するんじゃなくて、取り壊されてもいいと思えるようになればよかったんだ。もう通わなくなった学校がなくなったってなにが困る?。思い出の場所が消えたって記憶には残る。同じ学校に通ってきた人と共有することもできる。写真や動画に残せばまた思い出せる。
だからあの時、必死になって頑張って、無駄に足掻いて世界を変えようとした姫浦は…問題を妥協できずに滑稽に走り続けた姫浦が…誰にも理解されずとも負け戦に挑み続けてきた姫浦が…
愚かが、バカらしくて、滑稽で、浅墓で、阿呆で、拙くて、頓馬で、軽率で、間抜けで、迂闊で、無闇で…
羨ましかった。
僕の目の前で姫浦は神妙な面持ちで佇んでる。
四人がけの大きめのテーブルを挟んで僕と姫浦は向かい合って座っていた。
この状態でもうすぐ1時間経とうとしていたが…姫浦は一度たりとも僕に向かって顔をあげなかった。
やっぱり嫌われてるのかな。
なんとなく僕は姫浦と距離を感じていた。
今は家庭科の時間で家庭科室にいる。授業を受ける場所が変われば当然教室の席とは変わってくるわけで…同じクラスの人間ならばいつしかこうして面と向かい合うことになるのだろうけれど…その機会は僕が思っていたよりも早く来たというわけだ。
ちなみに僕と同じテーブルに座っているのは…。
「まさかここでも櫻井の近くになるとはな」
毎度お馴染みの加藤と…。
「それにしても…姫浦ちゃん、本当に可愛くなったよねぇ」
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