今日という日が特別であったなら

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その様子を眺めていた僕の横で加藤がそうぼやいた。 真剣に試合をしている二人を邪魔するのも申し訳ないので、少し離れたところから僕らは観戦することにした。 いつも歪み合いながらも互いに切磋琢磨していった因縁の二人の戦い。実力が拮抗した熱い戦いになる…かと思いきや、意外にも試合は3対0で副部長の本田があっさりストレート勝ちした。 「俺の勝ちだな。俺が勝ったところお前らも見てたよな?」 試合に勝った本田が嬉しそうに僕らにそう聞いて来た。 「因縁の最後の戦いが呆気ないな、もうちょっと粘れよな、部長」 加藤が僕の気持ちを代弁した。 「負けたもんは仕方ねえよ。この借りは高校で返すさ」 「返せるといいな」 そう言ってガッチリ握手をした二人を僕は羨望の眼差しで見ていた。 馴れ馴れしい関係ではなく、互いに互いを高め合うライバルという不思議な二人の関係性が羨ましかったのだ。 「ところで、お前らは高校行っても卓球を続けるのか?」 「俺はパスだな。さすがに飽きたし」 部長の倉本の質問に、加藤は素っ気なく返事をした。 「櫻井、お前はどうすんだ?」 何かを期待するような目をしながら、本田は僕に聞いて来た。 「僕は…」 そんな本田の目を僕はなぜか直視できなかった。     
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