今日という日が特別であったなら

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今日という日が特別であったなら

思ってたよりも普通だ。 別に特別な事はない。 泣いたり、笑ったり、後悔したり、せいせいしたり…別にそういう気持ちはない。 普通だ。とにかく普通だ。 中学の卒業式って言えば、ドラマとか漫画とかだったら、感動のクライマックスだ。級友や恩師との別れ、慣れ親しんだ学び舎からの巣立ち、新しい世界への旅立ち。 そんな今日という特別な日は普段は冷めている自分でも涙を流し、別れを惜しむことが当然だと思っていた。…そう期待していた。 しかし、実際のところはどうだろうか? 3年間という長いような短いような中学校生活の終わりという今日の日を迎えて、少しは感傷に浸ったり、涙を流したりするのかと期待していたが…僕の心は不思議となんの波風は立たなかった。 もちろんこの3年間、楽しいことも嫌なこともあった。たくさんあった。 だから今日という日が少しは特別であると期待してたのに…僕の心は凪のように穏やかだった。 多分、無意識のうちに『卒業なんてこんなもんだろ』と、納得してしまっているからなのだろう。…いや、もしかしたら心に刻まれるほど特別な出来事がこの3年間には無かったからなのかもしれない。     
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