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「まさかお前が王子様のお披露目舞踏会に参加できるとは」
灰色の角刈りに黒い瞳。額の三日月傷が目立つ厳つい顔のデレラ家当主シュウ・デレラは目頭を押さえて唸る。
武闘会決勝でおきた事件の影響で舞踏会が延期された結果、舞踏会までに一六歳の誕生日を迎えた男女にも舞踏会するよう招待状がきたのだ。
「私としては武闘会に参加したかったのですが」
参加してましたとは言えないシンは僅かに視線を逸らす。
いまのシンといえば肩と胸元が大きく開いた青いドレス。ただ薄く白いメッシュのケープで覆われているので色気はあまり出ていない。
スカート部分が大きく傘のように広がっていて、いかにも舞踏会の装いっぽい。
「参加される方はこちらのマスクをお願いします」
父親と離れて別室に案内されたシンは部屋のメイドから蝶を模ったオペラマスクを渡される。
いきなり王子の身元がバレて下手に媚びられて交友関係を阻害されないための措置と言われるとシンも断れない。
マスクを装着し別の扉からホールに続く通路に出る。
すると対面にある扉から鳥を模ったオペラマスクを付けた、翠の瞳に短く刈り込まれたオレンジ色の髪の少し肌が日に焼けたタキシード姿の少年が現れる。
ホールには男性が女性をエスコートして入るというマナーを受けての演出だ。
「お手を」
差し出された手を取りシンと少年はホールに入る。
ホールの中では何人もの少年少女がゆっくりとした3/4拍子で1拍目にアクセントがある音楽で男女が向かい合いクローズドポジションで踊るワルツに興じている。
最初はホールにエスコートしてくれたパ-トナーと踊るようだ。
二人のダンスはお互いに武骨だったが力強く見る者を魅了した。
そして一曲が終わりに近づくにつれ少年の顔は歓喜に染まっていく。
曲が終わりパートナーチェンジをする寸前、少年はシンの手に口づけする。
そして二人はお互いに声をかけた。
「君の名は?」
-END-
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