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4話 シンの初陣
「勝者クリシュナ・トーラス」
旗が上がると同時にオルテガノ・ヤキニが地面に倒れる。
シンの評価では近衛四聖騎士のなかでは下っ端だが試合はクリシュナのワンサイドだった。
そして近衛四聖騎士のトト、ルシャナは順当に勝ち進み、残す第一回戦はシンとラトナ・ランニングの闘いとなる。
「手加減は出来ないからな。ひとつハンデをやろう」
コキコキと首を鳴らしながらラトナはロングソードを闘技場の石畳の上に突き刺す。
物凄い技量の持ち主なのか物凄く切れ味のあるロングソードなのか、あるいはその両方なのか。
「5分だけ貴女の好きなように攻撃させよう。当てればわたしも戦う。しかし掠りもしなければ試合は諦めてくれないか」
ラトナの八重歯がキラリと光る。
「そう?じゃあ試合開始して」
シンが興味なさげに手を振ると審判が試合開始を宣告する。
カン
「へ?」
自分の鎧が叩かれる音にラトナは気の抜けた声を出す。
「どうした。今の動きが見えなかったのなら期待外れもいい所だぞ」
シンは改めて3回ラトナの鎧を叩く。
途端に会場を覆っていた、正体を見せない実力も判らない猫人のコスプレ少女に対する罵声が称賛の声に変わった。
正体不明だろうが成人になりたての少女だろうが闘技場では強いが正義だ。
観客席のあちらこちらで観客が手を挙げ、それに応じるように緑の帽子緑のオーバーオールを着た小柄な鼠人が走り回る。
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