1.パティシエと妄想パパ

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「リアルでは二回目、SNSでは半年くらいの付き合いなのに、実際会うとなんだかもっと昔からの友達のように感じるよね」  坂井は僕を見て優しい微笑みを見せた。春の日差しのような暖かな温度を感じる微笑み。僕は一瞬見とれてしまう。坂井さんと、友達になれたらいいのに……。 「じゃ、読み終わったらまた会おうね、明樹くん。感想聞かせてね」 「はい! 今日はありがとうございました。読み終わったらDMします!」 「またね」  坂井さんが西口方面に去っていくのを、僕は本を抱いたまま見送った。その時ポケットのスマホが震えた。取り出して画面を見ると、碧からメッセージが入っていた。 『ちょっと、まだなの?』  メッセージを見るまで僕は碧の存在をすっかり忘れていた。慌てて東口方面の階段を上がり、碧に駆け寄る。 「遅い! 受け渡しだけなのに何分かかってんのさ」 「ごめんごめん! フォロワーさんが会ったことある人でさ」 「マジで!? それすごくね?」 「だろっ? びっくりしてなんだか舞い上がっちゃった」  まだ心臓がソワソワフワフワ落ち着かない。 「それって女? 男?」 「年上の男性だよ?」 「ふーん。ま、とりあえずカラオケ行こ」 「もう、せっかちだな碧は。はいはい行きますよ。カラ館? カラ鉄?」    僕たちは東口のカラオケチェーン店に入った。ドリンクバーでコーラをグラスに注ぎ部屋に戻る。碧はメロンソーダだ。丁度届いたピリ辛なフライドポテトを碧は早速つまむ。 「さて、話をするシチュエーションはそろった。明樹、オレの話を聞いてくれ」 「よし! なんでも話して、碧。受け止められるように努力する」  碧は真面目な顔つきになり、メロンソーダでのどを潤すと、ソファとテーブルの間のカーペットの床に腰を下ろした。僕も隣に胡坐をかいた。 「オレが初めて勇人に逢ったのは、小六の時だ。修学旅行先で具合が悪くなって、母親に連絡がいったんだ。母親は勇人がパティシエをしているホテルで働いてて、オレを迎えに来てくれっていう連絡に慌ててたら、ちょうど早番で仕事上がりの勇人が気づいて、車で母親を日光まで送ってくれて、オレを旅館からピックアップすると家まで送ってくれた」
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