1.パティシエと妄想パパ

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「やさしい人なんだね」 「うん。勇人はやさしい……」  碧は自分が褒められたかのように嬉しそうな微笑みを浮かべた。口は悪いがカワイイ奴だ。 「それからうちの母親と仲良くなったらしくて、時々オレも一緒に三人でデートっていうか遊園地とか水族館とか出かけたりするようになって、一年後には結婚が決まってた。今から三年前。オレが中一の時だな」  結婚式は挙げなかったらしい。その当時、碧がすごい嬉しそうに僕に報告に来たのを思いだす。本音を言うとすごいうらやましかった。僕もお母さんが再婚をしてお父さんができないかな……そんなことを思った。 「三人で暮らすことになって、一人暮らしをしていた勇人の方がうちに引っ越してきたんだけど、最初のお父さんは八歳の時に死んでるし、大人の男の人と一緒に暮らすことに最初は慣れなくて、お父さんができてうれしいんだけど大変だった。オレは十三歳の思春期だったし……色々気まずいこともあって」  なんとなく察した。自分には新しいお父さんだけれど、お母さんからすると新しい夫なわけで。子どもとしても気を遣うよ……ね。 「十三歳とかちょうど……オレも大人になりかけというか、初めてパンツ濡らしてこそこそ洗ってたら勇人に見つかって」 「え、それで?」  思わず食い気味に身を乗り出してしまう。友人の下半身事情は興味が湧くお年頃。 「で……、勇人が一人でする方法を……教えてくれて」 「えっ!? それって……」  碧は照明が少し暗い中でもわかるくらいに頬を赤くして、慌ててメロンソーダをストローで啜った。 「……勇人が、て……てとり」 「手取り足取り?」 「それな。手取り足取り勇人が教えてくれた」 「それ……アウトなんじゃ!? 性的虐待に分類されちゃうんじゃ!?」 「虐待言うな! 勇人はマジメだから、なりたてとはいえ男親として自分がアドバイスしないと、とか思ったらしいんだ」  僕はどう反応してよいか、気が動転して思いつかない。普通の父親は自慰のやり方を実地で教えてくれるものなんだろうか。父親がいないのでわからないが、あの大きな手で股間を握られたら……気持ちよさそうだ。想像したら途端に股間が熱を持った。こらっ、こんな時に僕ったら! 不謹慎だろ!
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