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「その本を貸してくれたフォロワーさんと早く感想を共有したいんだ?」
「まあ、ね」
碧はニヤニヤしながら僕の脇腹をつつく。
「何か進展したらオレにすぐ教えろよ?」
「し、進展て、もう! そんなんじゃないからっ」
なぜか頬が熱くなり、碧から顔を背けるようにして帰り支度をした。
古澤さんの浮気相手の職業がパティシエなのが気になって、とても碧に昨日の坂井さんとの出会いとか話せないと思った。だから無理やりカラオケを切り上げたのだ。碧に隠し事するのは気が引けるけど、坂井さんのことはしばらく碧にはぼかして伝えよう。
土曜の夜には坂井さんに借りた本を読み終わり、すぐさまお礼と感想のメッセージをSNSでDMした。坂井さんからすぐ返信がきた。トリックについて意見を交わしていると、文章ではなく実際に会って話がしたいなぁ、と坂井さんに会いたい気持ちが募った。
『そうだ、明日時間あったりする? 新宿のデパートでミステリの謎解きイベントがあるんだ。よかったら一緒にどうかな? 行けそうだったら参加費おごるよ?』
『わー、行きたいです! 時間あります!』
すかさず返事を打ち込んだ。坂井さんと一緒に謎解きイベントとか、絶対に楽しいに決まっている。
WEBからの参加申し込みは坂井さんに任せて、待ち合わせの時間と場所を決め、トークアプリのアカウントを交換した。
「何着ていこう……! 参加費おごってもらうの悪いしやっぱ払った方がいいよね。どうしよう、うれしすぎて眠れる気がしない! 何か予習した方がいいのかな」
そのイベントのWEBページを見て概要を把握し、特に予習も必要ないことがわかりベッドに転がったが、遠足前の子どものように、ソワソワ、ワクワクしてその夜はなかなか眠れなかった。
新宿駅東口を出たとこにあるアルタ前に11時に待ち合わせなのだが、少し早めに着いた。日曜の新宿は別次元にでも繋がっていてそこから人が溢れてくるのかと思えるほどごった返していて、アルタ前も待ち合わせの人たちでいっぱいだった。
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