1.パティシエと妄想パパ

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 スマホを取り出して、到着したことをトークアプリで坂井さんに知らせた。するとアルタの入り口にあるチーズホットドッグの店前にいたらしく、坂井さんが手をあげて振りながら僕の方に近づいてきた。周りには人がいっぱいいたが、駆け寄ってきた坂井さんがとてもかっこよく見えて、キラキラした粒子を振りまいているようだった。なんだろ、フィルターがかかっているのか僕の目は。慌てて目を擦る。 「どうしたの? 花粉症? 擦らない方がいいよ」 「お、おはようございます! 目は大丈夫です! 今日はよろしくお願いします!」 「あはは、そんなかしこまらなくていいよ。@autumnくん…じゃなくて明樹君、今日はよろしくね」  ハンドルネームが@autumnなので、SNSではそっちで呼んでもらっていたが、今日は本名で呼んでくれる。 「制服姿じゃないからなんだか新鮮だね。私のために大人っぽくしてくれたのかな? ジャケットかっこいいね」  今日はボーダーのカットソーに紺色のジャケット、ボトムはチノパンで少しでも子どもっぽく見えないようなコーディネートにしたのだ。 「変じゃないですか? 坂井さんの隣に並んでも子どもっぽく見えないように、めっちゃ何着ていくか悩んだんです」 「そんなの気にしなくていいのに。でも私のために悩んでくれたなんてなんかデートみたいだね、うれしいよ。ほんとかわいいな、明樹君は」  頭をポンと触られて、ただそれだけなのに、深い意味なんてないのに、なんだか一瞬で満開の花畑に飛び込んだように胸中がざわついた。でも絶対子ども扱いされている。  謎解きイベントは、エントリーして2時間ほどでなんとか解き終えた。デパート内を上から下まで歩き回ったので少し疲れたけれど、坂井さんと二人で問題を解いていく共同作業はすごく楽しくて、時間の感覚がなかった。 「お疲れ様、名探偵! 歩き回ってちょっと疲れたね。明樹君はパズル系得意なんだね。問題解くの早くてびっくりしたよ」 「パズルとかクイズが大好きで、クイズ番組はけっこう網羅してるかも。坂井さんだって名探偵ですよ。坂井さんがいないと解けない問題がいくつもあったじゃないですか」
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