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「そうそう、古澤さんてパティシエだったんだな! びっくりしたよ。あのさ、前に話した子どもの頃妄想してたパ……お父さん、そのモデルにしてたのが古澤さんだったんだ。まさか碧のお父さんとは思わなかった!」
「お父さんじゃない……。勇人はオレのだ。誰にも渡さないんだから!」
「……碧??」
碧の激しい反応に、僕は戸惑って浮かべていた笑顔がこわばった。
「……いっぱい碧のこと聴かれたよ。学校ではどうだとか、友人関係はどうとか、いろいろ細かく。碧はすごい大事に思われててうらやましくなったよ」
不機嫌な顔だった碧が、一瞬で開花した花のような明るい笑顔を浮かべた。
「やばっ! HR始まっちゃう! 明樹、後で詳しく聞かせて! 急ご」
二人とも廊下を走り教室に急いだ。五階なので階段を二段とばしで急ぐ。
午前中の授業が終わり、昼は碧と学内カフェテリアに向かった。食べ盛りの高校一年生なので、3時間目と4時間目の間の休み時間に菓子パンを食べてはいた。しかしそれでは足りないのでボリュームのある唐揚げ定食を二人とも選び、さっさと平らげ、人気のない多目的ホール前の階段に移動する。
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