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校門をくぐると同時に自転車から降り、その余力を借りてでタタタッと数歩だけ走る。忌わしい事に校内での自転車に乗ることは禁じられているのだ。その後は決められた駐輪場の一画までそれを押して歩く。自転車に鍵をかけ、カゴから荷物を手に取って、昇降口まで歩いている時に「おや?」と思った。
昇降口の前には学ランとセーラー服に身を包んだ男女生徒が20人弱ほど通路の端に一列になって並んで立っていた。何をしているのだろうとやや不躾な視線を送ると、「おはようございまーす」と、言わされている感満載の気だるげな挨拶が飛んできた。ひとりが私に挨拶をすると、その隣の人物が私に挨拶し、するとまたその隣が、と言う具合に波状的に私にやかま……元気な声が投げかけられる。とすると彼らは生活委員の集まりなのだろう。たしか去年も同じような挨拶運動をしていたのを思い出した。早起きをしていつもより早く登校し、通りがかる人に対して無差別に声をかけることを強要されるとは気の毒なこと極まりない。彼らの挨拶に対し私はお辞儀だけを返すと、足の回転を速めて下駄箱へと向かった。大変な思いをしている生活委員の皆さんには悪いのだが、朝から大きな声を聞かされるのは、個人的にあまり好きではない。
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