☆ 通学・朝休み

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 シャロとは私のあだ名だ。このあだ名を私にくれたのは、目の前で花のように微笑んでいる彼女である。私が小学生の頃に冷やかしで呼ばれていた別のあだ名を彩が聞き間違えたことと、私の顔がシャーロットっぽいためにこのあだ名がついた。彩があまりに自信満々に私のことをそう呼ぶため、そのあだ名を私の本名であると勘違いしている生徒も少なからず存在しているようだ。  ちなみに私の本名はソーン・ホワイト・優。英国人の父と日本人の毋との間に生まれた所謂ハーフで、目鼻立ちは完全に英国系のそれである。そのため小さい時から目立ってしょうがなかった。中でも主張が激しかったのは髪色で、ゴールデンレトリバーみたいな色だと小学生の頃はよくからかいの的になったものだ。その環境のせいというのもあってか、私は今でも集団の中に身を置くことがなんとなく落ち着かない。当然、友達を作るというみんなにとっては当たり前のことが、私にとってはとんでもなく難しことに感じられた。そんな私にとって彩は、唯一友達と言える特別な存在だ。  もし彼女と同じクラスになれていなかったら、私の学校での口数は9割以上減っていたことだろう。そんな彼女の存在に感謝しつつ、私はため息の理由を彩に説いた。 「美化委員の仕事で、今週から通学路に落ちているゴミを毎朝1つ以上拾うことになっちゃって大変なんだよ」  ついさっき昇降口のゴミ箱に捨ててきた、変に示唆的な名前のペットボトルのことを思い出しながら私は不満を漏らした。     
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