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今、あの教室では出席が取られている頃だろう。そこで私の名前が呼ばれても、返事をする人間はいない。
その事実は、心の隅をちくりと刺すけれど、それ以上に充足感を与えてくれる。
一月二十六日、火曜日。私は高校を休んだ。高校の最寄り駅に着いても降車せず、そこから一時間以上電車に揺られ続けた。母には「学校休みます」とだけ、SNSで連絡した。
県庁所在地の大都市で電車を降りて、改札を出て、駅構内を一人ふらふらと歩いた。まだどの店も開いてないし、通勤通学ラッシュの真っ最中で、無駄に体力を削られただけだった。改札付近に戻ったらベンチを見つけた。誰も座っていなかったから、腰を掛けて鞄の底でつぶれかけていたクリームパンを食べた。スカートを超えてベンチの冷たさが伝わってきて、つい猫背になった。流れていく人混みは、見ないようにした。忙しそうに改札に飛び込んでいく人々を見て、引け目を感じたくなかった。
ずっと、ズル休みをしたら気持ちが良いだろうと憧れていた。高校二年生の終盤になって、初めてのズル休み。実際気分は良いけれど、人の目が気になって気になって仕方がなかった。なんだか、情けない。
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