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必死で抵抗していると、鈍い音ともに呻き声がして男の手が緩んだ。
恐る恐る顔を上げると、男は地面にうずくまり、目の前には同じ制服の男子が立っていた。
「え、佐野匠海じゃん。」
ふざけんじゃねぇと大声で殴りかかってきた後ろのチンピラのパンチをひらりとかわし、目にも留まらぬ左でノックアウト。
普段隣でおとなしく座っているメガネ君とは似ても似つかない姿に頭の処理が追いつかない。
いつのまにか男たちは全員道路に転がっていた。
「柴田さん、逃げよう。」
そう言って佐野匠海は私の腕を掴んで走り出した。さっきのチンピラとは違って優しい掴み方だった。
「もう大丈夫かな。」
いつのまにか人通りの多い商店街に着いていた。ここまで来ればチンピラたちも追ってこないだろう。
「ねえ、なんでそんなに強いんだよ。いつも怪我ばかりしているくせに。」
「僕一応プロボクサーなんだ。柴田さん、いつも怪我の心配してくれていたから気づいてるのかと思ってた。」
佐野匠海は恥ずかしそうに頭を掻いた。
「ほんとは喧嘩とかダメだから誰にも言わないでね。まだあいつらがいるかもしれないし家まで送るよ。」
聞きたいことはたくさんあるけれど、さっきから胸がドキドキして言葉に出せなかった。
前を歩く後ろ姿がいつもより大きく見えた。
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