1 見知らぬ犬、もしくは館山すみれの懺悔

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 そんなある日、久しぶりに友人たちと会った。かつては月に一度、多いときは週に一度集まっていたが大学を卒業してからは半年に一度くらいの頻度になっていた。最後に会ったのは確か六月くらいで、あれからもう半年以上経っている。クリスマスも終わりもうすぐ年が明けると言った時分だった。街は派手なイルミネーションで飾り付けられ、その下を歩く人々もどこか浮かれた足取りだった。私もようやく仕事が落ち着き、わずかな休みを貰えていた。しかし休みということは、彼と会えなくなる。どこで何をしているか、私は分からなくなる。  連絡先は一応知っていたからメッセージの一つでも送ればよかったけれど、一体なんと送ればいいか分からなかった。あわよくば二人で、とも思っていた。だが日頃のお礼というには少し無理がある。でも他にいい案が浮かばなかった。その時は、友人たちにその内容を相談しようとも思っていた。 「そういうわけで、なんて言えばいいかな」  ある程度食事も終わり、お酒も進み、あとはデザートだけという頃になって、私は彼女たちに尋ねてみた。それまで一度もこういう類の話はしたことなかった。するとしたら私たちの中で唯一交際経験のあるゆりちゃんの相談に乗るくらいだ。他に話せる人もいなかったし、のんびりしていたらあっという間にタイミングを逃してしまう。今日くらいしか相談できないと思い、何とは無しにそう聞いてみたのだ。  口直しのエスプレッソを飲んでいると、二人の表情がいつもと違うことに気がついた。 「え、何。どうしたの」 「どう、って。すみれちゃん。それ本気で言ってるの?」 「本気って……どうして?」     
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