【本編】

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改築してから、上の息子が風呂に入りたがらない。 始めは理由がわからなかった。来年から小学生になる我が息子は何回目かのやんちゃの盛りで、幼稚園から帰って来れば、まだ磨かれた泥団子の方がマシなくらいに泥まみれ。だから風呂には入って頂かなくては困る。私と妻と同居する両親にとってそれは毎晩の悩みであった。 まあ大人だって風呂が面倒な時はある。でもその億劫を乗り越えて入ってしまえば、途端に心身ともにさっぱりと、明日への充電が完了するというのが風呂の偉大なところだ。息子がまだその偉大さに気づいていないのは仕方のないことだ。だってまだ父である私の偉大さにも気づいていないのだから。いつも会社から帰った私に、「足が臭い」とローキックをカマしてくるのが、その証拠である。 まず息子が好きな、戦隊ヒーローのお風呂ポスターを貼ってみた。子供雑誌の付録で、水をかけると色が変わる。赤から黄色へ。フォームチェンジってやつ。しかしテレビの画面の向こうでは無敵を誇るヒーローの力も及ばず、3日で飽きられた。次に水鉄砲を風呂場に置いた。結構でかい。コッキングを数回すると中の水が圧縮されて、勢いよく水が吹き出す。置いた次の日、息子は風呂から持ち出して幼稚園に持っていき、壊して帰ってきた。我が息子ながら、なかなか手強い。 色々と策を講じたものの、息子の風呂離れは改善の兆しはなく、これはとにかく理由を聞くしかないと、息子を除いた家族会議で決議された。
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