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カーテンを開いた窓から、真っ白な夏の朝日が入り込んでくる。
「七海先輩、『卒業』が決まったらしいよ」
「ほんと? お祝い言わなきゃ」
同室の三人の会話を聞きながら、私は目を覚ました。ベッドの枕元に置いていた端末を見ると、六時三十分。寮で定められている起床時間ちょうどだ。
「おはよう、真由。起きられそう?」
実紀が私のベッドを覗き込んで笑った。私は目をこすりながら体を起こした。
「おはよう……七海先輩が『卒業』って、ほんと?」
「そうらしいよ。ゆうべ、消灯前に六年の人たちが話してた」
すっかり制服に着替えた陶子が、ベッドを整えながら答えた。この学校の制服はグレイのブレザーだけど、七月も三週目の今は半袖のシャツとチェックのスカートだ。シャツには襟と袖の縁に水色のラインが入っている。
「そうなんだ。寂しくなるね」
「でも、おめでたいことだよ。笑ってお別れしよう」
いちばん離れたベッドから梢が明るく言った。寮の部屋にベッドは四つ、足を向けあう形で二つずつ並んでいる。私は窓側、梢は斜め向かいの扉側だ。
「そうだよね。良かったね」
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